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episode.08

心には、いつも父。二人三脚で歩む職人の道

 曽於市大隅町の津留安郎さんは、芋焼酎の蒸留に使われる木樽を作る職人です。腕の良い職人だった父・辰矢さんに9年前に弟子入り。教えを請いながら二人三脚で木樽製作に携わってきましたが、平成26(2014)年9月、辰矢さんが逝去。現在、国内唯一の焼酎用木樽職人として父から受け継いだ木樽作りに精励しています。

 サラリーマンを辞め、父の跡を継いだ理由は「ほかに職人がいなかったし、メンテナンスだけでもできるようになったら、この先、蔵元さんに迷惑をかけないんじゃないかな、と思って」。津留家の木樽は現在、県内の焼酎メーカー14社に導入されています。杉と竹だけでできている木樽の寿命は3年から9年。メンテナンスや作り替えが必要なのです。

 「設計図は親父の頭と手の中だけ。見よう見まねだったけど、師匠が親父だったから覚えることができました」。褒めて伸ばしてくれた優しい父に助けられ、楽しく仕事をしてきたと津留さんは話します。

木樽職人 津留 安郎さん
「ちゃんとした物を作らんとですね」。実直で心やさしい職人気質は父譲り。先代の技術に追いつけるように日々研鑽を重ねています。木樽職人 津留 安郎さん
「ちゃんとした物を作らんとですね」。実直で心やさしい職人気質は父譲り。先代の技術に追いつけるように日々研鑽を重ねています。
道具は鍛冶屋さんに特注して木樽づくり用に作られたもの。先代の父から譲り受けたものを今でも大事に使っています。
道具は鍛冶屋さんに特注して木樽づくり用に作られたもの。先代の父から譲り受けたものを今でも大事に使っています。
道具は鍛冶屋さんに特注して木樽づくり用に作られたもの。先代の父から譲り受けたものを今でも大事に使っています。

まろやかな味わいを醸す昔づくりの木樽蒸留

 先代の辰矢さんは中学卒業と同時に木樽職人として働きはじめましたが、昭和30年代、木製品がプラスチックやステンレス製品に取って代わられる時代を迎えます。一時期、木樽製造をやめていましたが「やさしい味わいの昔の焼酎をつくりたい、という杜氏さんが父を訪ねて来られました」。30年ぶりに木樽復刻に取り組んだところ「手が覚えちょった」そうです。「父はよく『盗人(ぬすっと)は、手ずいは(手までは)持っていかん』と言っていました」何もかも盗まれても、腕さえあれば仕事はできる、という職人の心意気が伝わってきます。

 クギも接着剤も使わずに32、33枚の杉板を組む木樽づくりは、高度な技術と繊細な勘が求められ、一つ作るのに2カ月かかります。手間ひまはかかりますが、やはり、これでなければ生まれない焼酎の味わいと香りがあります。ぬくもりが育んだ一滴一滴は、今夜、極上のダレヤメ(晩酌)を提供してくれそうです。

角度や厚みを見ながら慎重に削り作業を繰り返します。気の遠くなる工程を重ねて一つの樽を仕上げていきます。角度や厚みを見ながら慎重に削り作業を繰り返します。気の遠くなる工程を重ねて一つの樽を仕上げていきます。
木樽は焼酎をふくよかでやさしい香りと味わいに仕上げる立役者。木の移り香の加減は蔵元によって異なるそう。木樽は焼酎をふくよかでやさしい香りと味わいに仕上げる立役者。木の移り香の加減は蔵元によって異なるそう。
先代の看板先代の看板

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