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episode.09

古式ゆかしく900年受け継がれる祈り

 毎年10月の第3日曜日、肝付町高山の四十九所神社に奉納される高山流鏑馬は、900年の長きにわたって継承されている伝統行事です。鏑矢を放つ「射手」には神が宿るとされ、五穀豊穣、悪疫退散、国家安泰を祈願する神事です。毎年、射手が交代するところが高山流鏑馬の特徴。かつて、射手は麓の郷士の家の若者から選ばれる決まりでしたが、現在は町内の中学2年男子の中から選出されます。射手は、馬に慣れるところから始まり、約50日間、練習を繰り返します。奉納前には海で身を清め、2日間の宮籠りと川での禊を行って心身を整えます。

 神事当日。神の化身となった射手は雅やかな狩衣装束、綾藺笠を身にまとい、神馬とともにおよそ300mの馬場を3回走り抜け、合計9本の矢を放ちます。落馬の危険と恐怖心、人々の期待という大きなプレッシャーを背負いながらも大役を果たす若者のひたむきな姿は、見る者に熱い感動を与えてくれます。

四十九所神社
豊宇気毘売大神、天照大御神をはじめ四十九柱を祀る神社。肝付氏の守護神として栄え、以来、大隅一円の宗社として崇敬されています。四十九所神社
豊宇気毘売大神、天照大御神をはじめ四十九柱を祀る神社。肝付氏の守護神として栄え、以来、大隅一円の宗社として崇敬されています。
汐がけの神事に向かう汐がけの神事に向かう
汐がけ神事汐がけ神事
弓受けの儀弓受けの儀
本番当日本番当日

伝統行事の中で醸成される親子の絆

 射手に選ばれた少年が大役を果たすためには、自身の覚悟と努力のほか家族、そして地域の人たちの力が不可欠です。とりわけ父親には、射手と同等の研さんが求められます。仕事を早仕舞いし、50日間の練習に参加しなくてはなりません。「わが子に決まった時は正直複雑な気持ちでした。拘束されますからね、毎日」。平成28(2016)年の射手を務めた近藤祐生璃君のお父さん、雅彦さんは話します。馬が走る前、浜からとってきた真砂を振りまいて馬場を清めるのも父親の役目です。「練習中だけでも330mを5往復です。わが子が落馬して怪我をする怖さはもとより、事故などによって900年続く行事の存続を妨げてしまうことへの危惧も胸のうちにはありました」。

 本番では、大勢の観客に興奮したのか、馬が途中で人家へ入ってしまうハプニングも起こりました。「でも、最後の一本を当てたから、どっと感激が」。伝統行事を共に成し遂げた父子の絆は、特別なものへと深まりました。

 大隅の伝統は、先人の魂を継承しようという強い思いと、世代をつなぐ濃い絆によって脈々と受け継がれています。

平成28(2016)年に射手となった近藤さん親子
「小さい頃から流鏑馬はかっこいいと思っていたので、話をいただいて嬉しかったです(祐生璃君)」。思春期の息子と父親。共通の話題があることが素敵です。「一瞬で判断しないといけないから決断力がついたかもしれません。名前の入ったラベルを貼ってもらった焼酎を二十歳になったら一緒に飲まんとね(雅彦さん)」。平成28(2016)年に射手となった近藤さん親子
「小さい頃から流鏑馬はかっこいいと思っていたので、話をいただいて嬉しかったです(祐生璃君)」。思春期の息子と父親。共通の話題があることが素敵です。「一瞬で判断しないといけないから決断力がついたかもしれません。名前の入ったラベルを貼ってもらった焼酎を二十歳になったら一緒に飲まんとね(雅彦さん)」。

高山流鏑馬を支える道具

鏑矢(白羽の矢)
9本ある鏑矢のうち最初に放たれる特別な鏑矢。鏑矢(白羽の矢)
9本ある鏑矢のうち最初に放たれる特別な鏑矢。
綾藺笠
流鏑馬本番で射手が被る綾藺笠は、他の流鏑馬では見られない、高山流鏑馬独特の笠。綾藺笠
流鏑馬本番で射手が被る綾藺笠は、他の流鏑馬では見られない、高山流鏑馬独特の笠。
鉄製のやじり
高山の流鏑馬では、今では希少となった鉄製のやじりが使われます。鉄製のやじり
高山の流鏑馬では、今では希少となった鉄製のやじりが使われます。

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