子どもたちを守りたい
取材に訪れたのは本土最南端の町
南大隅町、佐多馬籠にある
はまゆう保育所
山間にある静かで自然豊かな場所にある
小さな保育所で
ちょうど取材に訪れた際
お昼寝の時間とかさなり
すやすや眠る子どもたちの様子に
頬の筋肉が自然と緩んでしまう
それくらい子どもたちは愛らしい
閉園の危機を回避できたのは保育士の熱い想い
取材を受けて下さったのは園長の前田利香さん
2年前、前園長から今の保育所を引き継いだ
前園長から保育所を引き継いでほしいと打診があった当時は
地域の子どもたちの少子化で
経営困難に陥っていた状態
打診された際、正直乗り気ではなかった
経営困難の保育所、そう簡単に返事はできない
それでも引き継いだ後の展開を考え何か良い策はないか検討すること2年
そんな中、前田さんの気持ちに火をつける出来事が起こる
保育士の先生方が前園長に直談判される様子を目の当たりにしたのだ
「最後の一人となる園児まで送り出させてほしい」
必死に食い下がる先生方の姿
こんな素晴らしい職員が居るのならやってみよう。
先生方の熱い想いが前田さんの背中を押した。
2年で結果を出す。だめなら頭を下げて謝ろう
そう心の中で決意した瞬間だった
誰一人取り残さない 0歳から18歳まで繋ぎ支える
保育所を引く次ぐと決めたが
財政難の問題は変わらないまま
そこで存続のために打ち出した策が
クラウドファンディング
支援者をつのり子どもたちのために
多くの人が支援したこともあり保育所は存続の危機から脱した
そして新生はまゆう保育所が始まる
前田さんに取材した際に感じた素晴らしさ
それは柔軟な発想と新しいことにチャレンジする行動力
既存の概念を飛び越えて子どもたちにとって良いことなら
まずは取り組んでみる。良ければ継続。合わなければすっぱりやめる。
決断力も素晴らしく経営者らしい
また、保育所の子どもたちだけだけではなく
小学校、中学校などの成長した子どもたち
地域住民、子育て中の父兄、高齢者、行政もまきこんでの
地域全体を考えた包括的な子育て環境の整備も考えているあたり
かなり俯瞰した視点も持ち合わせている。
鹿児島県内でも高齢化率1位の町だからこそ地域住民一体になって
本気で取り組むステージに来ている
保育所、小学校、中学校、高校と枠を作るのではなく
子どもたちを園児の頃から知っている
保育士や学校の教師、父兄、住民、高齢者
枠を飛び越えて繋いでいける法人となるのが目標
たった一人の子どもの為に保育所が存在する
子どもたちが安心して成長することができる環境作り
子育て中の親の立場で考えれば
働く場所や住む家があること
そして子供を見守ってもらえることが安心材料となる
若い世代が町に定住し人口が増えてくれたら
先々、高齢者を支えるマンパワーとなる
保育所経営だけの話ではない
保育を中心にしながらも地域全体の課題も考えての
法人化でもあった
前田さんの考え
地域の誰一人として取り残さない
保育も含めて多機能化が必要な時代
この町だけの話ではなく日本全体がこうした取り組みを
していく必要があるのではと思う
こだわりがないのがこだわり
本来ある保育所のカリキュラム
そのカリキュラムさえ無くても良い
笑いながら前田さんは言う。
はまゆう保育所は現在保育園留学を行っているが
小さな山間の保育所に毎月のように県内外から
子どもたちが家族でやってくるそうだ。
途切れることなく留学生がやってくる
はまゆう保育所が選ばれる理由
⓵ 経験豊富なベテラン保育士が在籍していること
⓶ 少人数のため手厚い保育環境にあること
⓷ 少人数だからこそ広い園庭で自由に遊べること
⓸ その日登園してきた子どもたちの人数や天候でスケジュールを変更できる
⓹ 他の保育所では体験できない外部講師による講座体験などができる
理由をあげればきりがないのだが上記の元になっているのは
こだわりがない これにつきる
山間の小さな保育所だから子どもたちの選択肢が少ないのは
仕方ないとは言いたくない
子どもたちの可能性を広げてあげたい
もっと言えば子どもたちが自分で
生きる力を身につけることが出来るよう
サポートすることが大人の役目
様々な大人と関わることで得られる知識と体験
その中でそれぞれの子どもたちが自分で選択し
自分らしく生きていく
生きる力は幼少から多くの人との関わりと体験から
形成されていく
自分で考え決断し行動できるよう多くの体験が必要だろう
前田さんは元々、商工業界で活躍されており
保育業界は今回初めてだ
だからこそ
既存の保育業界のルールや概念に囚われることなく
保育所の門戸を開き
これまでの経歴を活かし
人を繋いでいく、いろんな人に声をかける
どんどん広がっていく
多くの人を巻き込んで変化していく
雨が降れば濡れてしまう
だが、雨だから楽しむことができる
天候の変化にも柔軟に対応する
水たまりだらけの園庭で傘や合羽を着て雨靴を履き
笑顔ではしゃぐ子どもたち
こうした体験も大切な経験となる
自由に遊べる体験が人生の糧となる
kids呼吸ヨガ教室 ART教室
実は今年度から筆者も、はまゆう保育所で
kids呼吸ヨガ教室の講師として
子どもたちと関わらせてもらっている。
現在多くの子どもたちが抱える問題
鼻炎と不良姿勢、メンタルの安定
口呼吸とスマホ、ゲームなどライフスタイルの変化が原因の一つ
こうした問題を改善すべくkids呼吸ヨガを行っており
現在、子どもたちに良い変化が少しずつ現れていることが嬉しい
可愛い笑顔に筆者もパワーをもらっている
またアートに触れるのも子どもたちの感性を育むには必要だ
錦江町在住のアーティスト
越山由唯さんはART教室の講師として関わっている
国内、海外でも絵の展示をおこなっているプロの画家である
越山さんからアートを学べることはそうそうないだろう
こうした経験ができるのも、はまゆう保育所の強みとなっている
2年前、地域から保育所をなくしてはいけない
熱い想いで引き継いだ。
引き継いだ以上、継続していかなければ意味がない。
この2年間、柔軟な発想でチャレンジしてきたことが功を奏した。
もちろんそれだけではない。
突然の出来事でも柔軟な対応ができるベテラン保育士の存在
地域住民からのサポートもあったからこそだろう。
本土最南端の小さな保育所が
新時代の先駆者となる日は近い。
〒893-2604 鹿児島県肝属郡南大隅町佐多馬籠3471
友井川 愛 AI TOMOIGAWA
友井川 愛 AI TOMOIGAWA
生まれ育った大隅を盛り上げ隊とライターを始めました。 現在、錦江町地域起こし協力隊3年目。地元は鹿屋市です。 呼吸ヨガ講師としてヨガで地域起こし活動中。 錦江町をメインに大隅全体の魅力を発信していきます。
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