「地域を楽しんでいる『遊びの達人』を集めて、プロジェクト化していきたいんです。南大隅をもっと楽しめるような機会を、たくさん提供していきたいですね」そう笑顔で語るのは、濱田 龍也(はまだ・たつや)さん。2017年から南大隅に移住し、ゲストハウス・カフェのオーナーを務める、地域の貴重な若手の一人です。
濱田さんの働き方は、まさに「自由闊達」の一言。
従業員およそ240人のリサイクルショップの社長を務めたあと、パイナップル農家として南大隅町で新規就農。2021年にはほぼ全てDIYで海辺のゲストハウスを立ち上げ、2022年の春からはカフェ事業も本格化。天気のいい日は船に乗って釣りに出かけ、夜はゲストハウスのお客様や友人たちとバーベキューを楽しむ…。田舎暮らしに憧れる人の夢を凝縮したような生き方と言っていいでしょう。
今回は、そんな濱田さんの事業である「hello! brand new days 」が運営する、ゲストハウス・カフェのこだわりや今後の展望について伺い、南大隅の観光をもっと楽しむヒントについて考えます。
大杉:本日はよろしくお願いします!カフェができてから伺ったのは今回が初めてなので、楽しみにしておりました。
濱田:こちらこそよろしくお願いします。最近雨続きでしたが、今日は天気が良くてよかったですね。うちのカフェは晴れの日しか営業していないので、この機会にぜひ楽しんでいってください。
新規就農し、パイナップル農家へ
大杉:濱田さんが南大隅に移住したのは、2017年からですよね?
濱田:そうですね。兄がその前から南大隅で新規就農して、パッションフルーツやアボカドを育てていました。私も家族と一緒に年に数回は遊びに来ていたのですが、そこで見た大浜の夕日がとても綺麗で。美しい景色に惹かれて、南大隅に移住することを決めました。
大杉:南大隅では、近年は町全体で熱帯果樹栽培に力を入れています。濱田さんもパイナップル農家として新規就農したんですよね?
濱田:役場の方々からはパッションフルーツを強く勧められたのですが、受粉や収穫など細かい作業がたくさんあって大変なんですよね。私はもとからゲストハウスの事業も視野に入れていたので、農業だけに注力しなくていいように、という思いもあってパイナップル一筋でいくことにしました。
大杉:濱田さんのパイナップルは「クルーズトレイン『ななつ星in九州』」でも提供されていますね。甘さと香りが格別で、贅沢な逸品ですよね…!
濱田:現在は主にオンラインショップで販売しています。市場や農協での出荷はしておらず、顔の見える距離での販売がやる気につながっていますね。
YouTubeで身につけたDIY精神
大杉:ゲストハウス「hello! brand new days inn」の事業は、2021年の4月からスタートしましたね。
濱田:移住する前から、「南大隅には気軽に滞在できる場所が少ない!」と感じていました。佐多岬や雄川の滝などの観光名所があって、バイクや自転車でのツーリングも楽しめて、ここでしか食べられない食材もたくさんある…。日帰りで帰るにはもったいないぐらいたくさんのアクティビティがあるのに、結局は近隣地域で滞在するパターンが多く、じっくり腰を据えて南大隅で楽しめないのがもったいないと感じていました。
大杉:確かに、友達と気軽に楽しめるような滞在スポットは少なく感じます。キャンプ場はあちこちにありますが、アウトドアではない形で夜もワイワイ楽しめる場所は貴重ですよね。
濱田:そこで、「ないなら自分で作ってしまおう」と考えたんです。移住前から目をつけて交渉していた海辺の物件があったのですが、苦労の末にやっと使用のOKが出たんです。そこからDIYで地道に改修を続けて、2021年の4月27日に事業をスタートさせました。
大杉:自分も改修風景を遠目で見ていたのですが、どんどん外見が豪華になっていって感動したのを覚えています。あれは全て自分で改修したんですか?
濱田:そうなんです。YouTubeを見ながら、全て独学でやり方を学んで試行錯誤しました。わからない部分は、地元の工務店の方に聞いたりして進めましたね。息子や娘にもタイル貼りを手伝ってもらったりして、楽しい作業でした。
大杉:YouTube一本で、そこまでカバーできるんですね…!やる気さえあればなんでも自分で調べられますし、チャレンジ精神さえあればなんでもできる気がしますね。
濱田:基礎工事や水回りは大事ですが、あとのことはどうでもいいしどうにでもなるんものなんですよ。
コロナ禍からスタートしたゲストハウス事業
大杉:実際にゲストハウスを始めてみて、反響などありましたか?
濱田:基本的にはInstagramを中心に情報発信や予約受付を行なっているのですが、口コミがどんどん広がっていったのがありがたかったです。コロナ禍もあって始めは鹿屋など近隣地域からのお客様が中心でしたが、今では県内外から多くの予約が入っています。
大杉:ここまで素敵な場所に滞在できるのは嬉しいですよね…!大浜の美しい海を眺めながら、夜はバーベキューやパーティーも楽しめますし、気の合う友人や家族での滞在にはぴったりですね。
濱田:近くにはダイビング関係のお店もありますし、釣りを始めとするマリンアクティビティも気軽に楽しめます。佐多岬への観光ルートの途中にあるので、さまざまな楽しみ方ができると思いますね。船舶免許も持っているので、今後はクルージングや釣りの案内でもできるようにしていく方針です。
「友達が遊びにきた時、満足してもらえる場所」
大杉:今年の春からは「hello! brand new days cafe」も本格スタートしましたが、カフェ事業も始めから構想に入っていたんですか?
濱田:イメージはしていたのですが、ゲストハウスと連動して始まった部分が大きいですね。これまでは宿泊業の認可はあったのですが、飲食物の提供の許認可がなかったため、私たち自身で食事を提供することができなかったんです。お客様自身でのバーベキューや食事の持ち込み、キッチンでの調理はOKだったんですけどね。
大杉:なるほど!カフェの認可が降りれば、ゲストハウスでも食事の提供ができるわけですね。
濱田:お客様のご要望に合わせて、ドリンクメニューや朝食・夕食の提供ができるようになりました。
大杉:カフェもドリンクメニューやデザートなど、メニューが充実していてすごいですよね…!自分も抹茶フラペチーノやチョコレートのマフィンを頂いたのですが、大人の味わいでとても美味しかったです。
濱田:基本的には全て手作りで、妻が仕込みを行なってくれています。自家製のパイナップルを使ったメニューを中心に、日々新たなメニューを構想していますね。ゲストハウスもカフェも「友人が遊びにときに、満足してもらえるお店にしたい!」という目標で始めて、移住前に住んでいた関西からも多くの友人が遊びに来てくれました。喜んでもらえると、どんどん次の企画をやりたくなってしまうんですよね。
大杉:移住直後は地域に親しい友人がいないパターンもありますし、遊びに来てくれるのはありがたいですよね…!南大隅での暮らしを思いっきり楽しんでいるようで、羨ましい限りです。
南大隅を、もっとディープに楽しむ
大杉:最後に、今後の展望などあれば教えてください!
濱田:南大隅ではツーリング・釣り・キャンプなど様々なレジャーが楽しめますが、ゲストハウスやカフェを通して、そうした機会をもっと気軽に、ディープに提供できるようにしていきたいです。
釣りの穴場を知っているマニアな釣り人、地元の山道に精通したバイク好きの友人など、「遊びの達人」が地域にはたくさんいます。そうした方々とお客様をマッチングしながら、もっと南大隅を楽しんでもらえるような「ハブ」的なお店になっていければ理想ですね。
大杉:南大隅の楽しみ方が、「hello! brand new days 」を通してさらにディープなものになっていくといいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!
(顔写真・ゲストハウス画像提供:山下大裕)
鹿児島県肝属郡南大隅町根占辺田908−1
大杉祐輔