観光地を訪れたとき、観光だけで終わらすのはもったいない! と思ったことはないでしょうか?
美しい自然、おいしい食べ物、見たことがないような風景…。それらを味わってなお、まだまだ満足できない。もっと地域の暮らしや文化、そこに暮らす人々のひととなりに触れてみたい。訪れた地域に惚れこめば惚れこむほど、その思いは強くなっていきます。
2021年10月、そんな地域のディープな魅力をのぞき見できるフリーペーパーが誕生しました。その名は「錦江おてもと」。錦江町に移住した、20代の若手2人が作成した冊子です。
「錦江おてもと」の編集長である友安麻里亜(ともやす・まりあ)さんは、2021年4月、錦江町の未来づくり専門員(地域おこし協力隊)として宮崎から移住してきました。「錦江町はすごく魅力的な地域なのですが、なぜ自分が移住を決めたのかと言われると、はっきりと言葉にしにくいんですよね。」と、友安さんは真剣な表情で語ります。
「でも、何よりも『ひと』が素晴らしい地域なのは確かです。地域の方々へのインタビューを通して、錦江町の等身大の魅力を見つめ直してみたいと考えるようになりました。」
そんな思いで、これまでの活動で関わりのあった錦江町の住民4人へのインタビューを行いました。「全員へ統一した内容の質問を投げかけて、それぞれの答えによって見えてくる錦江町の姿を発信したいと考えたんです。」と友安さんは話します。
実際にインタビューをしてみて全員に共通していたのは、やはり『錦江町が好き』という思い。
「取材をしてみると、普段お話しているだけではわからないような気づきがたくさんあります。普通に生活しているとお邪魔できないような場所に伺えるのも楽しいですね。地域のお肉屋さんの調理場のなかとか」と、友安さんは笑顔で語ります。
そんな友安さんは、本を通して地域の方々が交流できる場づくりに力を入れています。
「『なまえのない読書会』というイベントに取り組んでいます。地域活性化センターの一室を、自由にくつろげる図書館として開放する企画です。年齢や肩書きに関係なく、本を中心として好きなものを持ち寄って交流できる場です。明確な目的意識がなくても気楽に集まれて、本を通して心地のよい繋がりをつくれればと考えています」
共同製作者であり、未来づくり専門員の仲間である馬場みなみ(ばば・みなみ)さんも「本と一筆」という読書会を2020年から続けており、地域の本好きがつながる場を提供しています。
「本」をこよなく愛して活動している2人が、錦江町のディープな魅力に迫るべく作ったのが「錦江おてもと」。紙面全体から溢れる熱量の秘密はここにあります。
今回作成した「実験号」は100部印刷したところ、一瞬で在庫がなくなってしまったそうです。錦江町出身の親戚や知人に送りたい! という声も多かったとのこと。
「読んでいただくと、自分の生活との共通点を感じたり、なんだか懐かしい気持ちになったりすると思います。錦江町の雰囲気や、町民の方々自身の言葉から感じる魅力を楽しんでいただければ」と友安さんは笑顔で話します。
かけがえのない日常に寄り添い、観光だけではわからない地域の魅力を味わうための「箸」となるのが「錦江おてもと」。錦江町を訪れたときにはぜひお手に取ってご覧ください。
大杉祐輔