いつでも大切なことに米印を- KOME Kaffee物語

いつでも大切なことに米印を ― Kome Kaffee(コメコーヒー)物語

鹿児島県大隅半島の小さな町、大崎町の一角に佇む「KOME Kaffee(コメコーヒー)」。
2024年6月にオープンしました。なぜかドイツ語です。

店主の未知さんは東京都国分寺の喫茶店での修行を約10年。同時に20歳頃から自分で珈琲焙煎を始め、経験を重ねながら技術と経営を学びました。そして夢だった自身のカフェを大崎町で開きました。

 

素材と手間ひまへのこだわり
メニューはネルドリップと水だしの珈琲に、キャロットケーキ、バナナとサワークリームのビスケットなどのスイーツ。モロッコ料理のハーブとスパイスを練りこんだ牛肉のケフタのスパイスカレーなどの軽食も運が良ければ楽しめます。
KOME Kaffeeが目指すのは、「冷めても香りと深みが残る珈琲」です。 そのために、まず素材選びからこだわります。仕入れる生豆の9割は、オーガニックでフェアトレードのもの。生産者の方への敬意を込めて、蒸燻処理されていない本物の無農薬豆だけを厳選しています。
次に、焙煎前と後の二度にわたり、カビや虫食いなどの欠点豆を丁寧に取り除く「ハンドピック」を行います。この工程で豆は半分近くの量になりますが、雑味のない豆本来の味をだすためには欠かせません。

(規格外バナナの「ぽこぽこバナナ」を使ったビスケット)@Michi

 

理想の一杯
店主の未知さんが一杯の珈琲に込めるのは、自身の歩んできた道のりと、お客様一人ひとりの時間に寄り添いたいという深い想いです。その物語は、一杯の水出しコーヒーとの出会いから始まりました。

 

原点は、母と訪れた浜松の喫茶店
すべての始まりは、未知さんが10歳の夏休みに遡ります。母の故郷である静岡県浜松市で、母が高校時代にアルバイトをしていた喫茶店に連れて行ってもらった時のこと。マスターと楽しそうに思い出を語らう母の姿、そして当時の愛称で呼ばれる様子が、子どもの目にはとても新鮮で輝いて見えました。その光景が強く心に残り、「いつか自分もこんな素敵な仕事をしたい」という夢が芽生えた瞬間になりました。

@Michi

 

そのお店は、水だし珈琲のみで提供するの喫茶店でした。水だし珈琲のその独特のクリアな味わいと、ぽたりぽたりと時間をかけて抽出される光景は、未知さんの心を完全に捉えました。これが「将来は水出し珈琲のお店を開きたい」という、彼女の人生を貫く目標となっていきます。

 

コーヒーに捧げた情熱の日々と、運命の扉
高校生になると、その夢は具体的な行動へと変わります。水出しコーヒーの名店と言われるお店を巡り、「ここで働かせてください」といくつもの扉を叩きました。特に心惹かれたのが国分寺の喫茶店でした。地元の人気店ですが、19歳の時に働くことができるようになりました。

 

止まらない探究心―「マグロ」と呼ばれた日々
学生時代の未知さんは、友人から「マグロ(止まったら死ぬ)」と呼ばれるほど、常に動き続けていました。早朝からカフェでアルバイトをし、カフェの学校へ行き、その後はまるで仕事のようにカフェ巡りを。1日に10軒ものカフェをはしごすることもあったそうです。

(たまに「ぽこぽこバナナ」アイスクリーム)@Michi

 

自家焙煎をはじめる
その情熱は、さらに形になっていきます。未知さんは喫茶店で働きながら、20歳の頃から個人で珈琲豆の焙煎研究を始め、技術も磨いていきました。
お店のオーナーも「将来お店をやりたい」という未知さんの夢を理解してくれていたため、カフェのオペレーションや経営哲学を学ぶことができました。
そして2017年、長年の焙煎研究の成果を試すべくマルシェに出店を開始。同時に珈琲豆のネット販売も始めました。まだ実店舗はありませんでしたから、自宅での手振り焙煎によって着実に販売実績を積み重ねていきました。

 

カフェから時代は作られる
国分寺の喫茶店では働き始めてすぐ、スタッフ研修でパリへ行く機会に恵まれました。パリで目の当たりにしたのは、単に飲食をする場所ではなく、文化や思想、政治や歴史が生まれる「社交場」としてのカフェの姿でした。この経験は、未知さんのカフェ観「食べる・飲む・くつろぐ」を根底から覆し、「お客様が自分の時間に深く集中できる、可能性が広がるような空間を作りたい」という、現在のKome kaffeeのコンセプトの礎となりました。
お客様の時間を邪魔しない、最高の脇役としてのコーヒー。その味はもちろんのこと、空間やサービスのあり方まで、店のあり方にはパリでの体験が深く影響を与えているようです。

@Michi

人生の休息
東日本大震災後、未知さんはドイツの地に立っていました。震災ボランティアで知り合った方からの依頼で向かったのがドイツでした。そこで仕事をしたり旅に出たり。
ある日、電車に3時間揺られながら、窓の外を流れるの羊の群れと牧草地をただただ眺めていた。その静寂の中で、未知さんは初めて自分自身と深く向き合うことになったという。「止まったら死ぬマグロ」と言われるほど、常に何かに追われるように生きてきた。けれど、本当にやりたかった喫茶店はまだ実現していない。本当に大切にしたいことは何だろう。
ふと、日本のお米が、納豆巻きが、猛烈に食べたくなった。「そうだ、大切なことを見失わないように、米印をつけておかないと」。

 

「いつでも大切なことに、米印を」
そうして、コーヒーを飲む時間くらいは、自分にとって大切なことを思い出せる豊かな時間であってほしい。その想いから、「KOME Kaffee コメコーヒー」という名前が生まれました。だからドイツ語なんですね。

@Michi

「一緒にお店やりませんか?」―夢が現実になった日
人生の少し長い「お休み期間」を経て、未知さんは鹿児島へ向かいます。実は20代の頃、「自分が美味しいと心から思えるところで教わりたい」と全国をまわり、鹿児島市内の喫茶店で本当に美味しい珈琲に出会っていました。大崎町に向かううえでも、そこで2年間焙煎を学び、知人もいたことから、再び鹿児島を選ぶことに安心感があったのです。
大崎町に移り住んだとたんに運命は思わぬ形で扉を開きます。パートナーの職場の同僚の方が、カフェができる人を探していたのです。「一緒にお店やりませんか?」と言われたのです。昔から「返事は、はいか、イエスか、喜んで」を信条としていた未知さんは、その場で「いいですよ」と快諾。こうして、10歳の夏に抱いた夢が、巡り巡って大崎町という場所で、最高の形で実現することになったのです。

 

元薬局の記憶に、珈琲の香りを重ねて
そうして1年がめぐり、KOME Kaffeeは、訪れた人が本を読んだり、誰かに手紙を書いたりと、思い思いの「時間を愉しめる」場になりました。
ここは元々「中央薬局」という薬局でした。その歴史を尊重し、薬棚や「調剤室」と書かれたガラス戸などをそのまま活かし、お店の歴史に合う時代の家具や調度品を丁寧に選びました。新しく作るのではなく、ここにあるものの良さを引き出す空間づくりを大切にしています。

 

言葉にならない想いを、受けとめる場所
この場所で、辛いことがあって気持ちを落ち着けるために窓の外を眺めて過ごす方や、店内でのささやかな会話の中で、ふと涙を浮かべながら家族の話をされるご婦人もいらっしゃいました。元々の友人ではない、喫茶店という特別な空間だからこそ、心が許せる瞬間が生まれるのかもしれません。
流行りを追うのではなく、「いつ来ても当たり前においしくて落ち着く」—そんな願いを込めて、未知さんはこれからも一杯の珈琲と向き合います。

 

KOME Kafee
こうして列車から眺めるドイツの車窓から生まれた「KOME Kaffee」は、旅路の果てに、大崎町という新たな根を下ろすことなりました。店に立つ彼女は、今日も訪れる人々へ、一杯の珈琲にそっと「米印」を添える。忙しい日常の中で、誰もが自分にとっての「大切なこと」を思い出せるように、と願いながら。それは、まるで水のようにすっと身体に馴染み、それでいて常に新鮮で薫り高い、理想の一杯。訪れる人にとって、この場所が穏やかな時間を提供できる喜びを感じながら、KOME Kaffeeはこの町で喫茶店として根を張っていきます。
一杯の珈琲に込められた、彼女の情熱と人生の軌跡を、ぜひ味わってみてください。

@Michi

オンラインショップもあります
URL;https://komekaffee.theshop.jp/
KOME Kaffeeは完全受注焙煎となっております。
焙煎前と焙煎後の丁寧な丁寧な、ハンドピックをすることで、冷めても美味しい。そして薫り高い上質な珈琲が出来上がります。

お手元に届く日から飲み頃となっており、届いたその時から珈琲の豊かな香りを愉しんでいただけます。その為ご注文からお届けまで凡そ6日ほど見ていただけると幸いです。

表示価格は100g単位の価格となっております。
※100gでカップ8杯~11杯程お飲みいただけます。

いつでも大切なことに米印を- KOME Kaffee物語

〒899-7305 鹿児島県曽於郡大崎町假宿1091‐1

https://kome-kaffee.com/

アクセス
大崎町役場近く、中央薬局の看板が目印
営業時間
11:30-15:00(L.O14:30)
定休日
金曜日、土曜日、日曜日
駐車場
なし
注意事項
営業日についてはインスタグラム参照
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この記事を書いたライター

こだち

こだち

大崎町で活動するこだちです 持留にて子ども森の広場「もちっこもりのおうち」を開いています

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