錦江湾サウスロードユースホステル 原口雅子さん

 


南大隅で唯一のユースホステル


 

「日本の各地からいろんなお客様がいらっしゃるので、お話を聞くのも楽しみなんです。お金をもらって勉強させてもらっている感覚ですね」そう笑顔で語るのは、原口雅子(はらぐち・まさこ)さん。南大隅町で「錦江湾サススロードユースホステル」を一人で切り盛りする、宿泊業歴約40年のベテランペアレントだ。

 

南大隅町は、鹿児島県でも最南端の田舎町だ。なかでも本土最南端に位置する佐多岬はツーリングに人気のスポットで、天気のいい休日はバイクや自転車などで多くの観光客が訪れる。

 

そんな南大隅で唯一のユースホステルが、「錦江湾サウスロードユースホステル」だ。指宿と南大隅をつなぐ「フェリーなんきゅう」から徒歩5分の場所にあり、地元民にも人気の温泉施設「ネッピー館」や、コンビニにもすぐにアクセスできる。短期間の気軽な滞在にはぴったりの施設だ。

 


そもそもユースホステルって?


 

しかし、そもそもユースホステルとはどんな施設なのだろうか。「ユースホステルは『青少年の旅の中で、安価で安心に滞在できる場を提供しよう』という理念でおよそ100年前に誕生した、世界規模の滞在ネットワークです。世界80カ国に施設があり、日本にはおよそ150〜200件のユースホステルがあるんですよ」と原口さんは語る。

 

 

日本ユースホステル協会(JYH)に申請すれば会員になることができ、登録された施設に安価で泊まることができる。「ユース」と銘打たれているが年齢制限は特になく、どんな旅人でも気軽に利用できるシステムなのだ。

 


本土最南端のユースホステルを訪れる人々


 

錦江湾サウスロードユースホステルには、どんなお客さんが滞在しているのだろうか。「昔は若者がたくさんいたのですが、現在は退職して年金生活に入った方々が旅行にやってくることが多いですね。生活に余裕ができて、昔を懐かしんで遊びに来てくださる方もいらっしゃいます。釣りに行ったり観光地を巡ったり、皆さんのびのびと滞在されていますね」と笑顔で語る。

 

 

本土最南端の佐多岬を目指して、日本縦断の旅に訪れる若者も多い。「自転車・バイク・徒歩など、皆さん思い思いの方法で佐多岬を目指していきますね。コンパクトなリヤカーや、折り畳み式の荷車を使う方もいて、話を聞くのも刺激になりますよ」と原口さんは楽しそうに話す。仕事を退職して、次の仕事までの休業期間で日本縦断を目指す方もいるという。

 

 

また、実家の管理のために滞在する南大隅出身者の利用もあるそうだ。「親御さんが入院している間に実家の草払いに来る方や、両親が住んでいた家を引き払うために掃除に来る方もいらっしゃいます。親御さんが亡くなっていたりすると、電気もガスも止まっているので、実家とはいっても泊まるのが難しいんですよね」と原口さんは語る。こうした問題は高齢化が進む地域での大きな課題だが、ユースホステルは地元出身者にもありがたい滞在拠点となっているのだ。

 


日本各地でのユースホステル運営


 

錦江湾ユースホステルは今年で創業27年目だが、原口さんの宿泊業経験はそれよりもさらに長い。「私は東京の出身なのですが、学校を卒業してからはJYHの職員として、日本各地のユースホステルに派遣されていました。初めて赴任したのは香川県の小豆島(しょうどしま)で、そこで上司として働いていたのが主人だったんですよ」と懐かしそうに語る。

 

ご主人とご結婚されてからも、原口さん一家は日本各地を飛び回り、ユースホステルの仕事に汗を流した。山梨県、佐賀県、山口県。一日に60人以上が滞在するような大きな施設での仕事から、寒さの厳しい盆地の施設での仕事など、2人でさまざまな経験を積んだ。しかし、さまざまな地域を10年以上渡り歩くなかで、一つの拠点を持って独立したいという思いが芽生えてきた。「同じ仕事をしていたので、当時の主人とはケンカばかりでしたね。笑 転勤も多く、子育てのことを考えるとやっぱり一つの拠点を持ちたいと考えるようになったんです」

 

そこで選んだのが、鹿児島県の南大隅町だった。ご主人の両親が大崎の出身で、独立するなら鹿児島がいいというイメージがあったそうだ。「当時から佐多岬はツーリストに人気のスポットで、多くの観光客がいらっしゃいました。指宿と根占をつなぐフェリーもありますし、主人が即決して役場と交渉を始めて、営業できることになりました」

 

 

2人で新たなステージを迎えたのも束の間、開業して2年目にご主人が亡くなった。雅子さんはお子さんがいる中で、一人でユースホステルの経営をしていくことになった。「施設は全て用意してくれていたのが幸いでしたね。宿泊業の経験はあったので、1人でもなんとか回していくことができました。小規模な施設ですし、これまでのような大規模施設に比べたらやりやすいですよ」と原口さんは笑顔で語る。掃除が行き届いたきれいな室内を眺めていると、原口さん一家の過ごしてきた力強くも暖かい歴史を感じた。

 

 


本土最南端のユースホステルのこれから


 

そんなユースホステル業界も、コロナ禍の昨今は変化を迫られている。高齢化もあって若者の観光客は減り、地元民の帰省客も少ない。ここ数年で、廃業を決めた同業者も少なくないという。「宿泊業をしている以上、やはり地域の方々にも気を遣いますね。私もここ数年はほとんど県外に出ていませんし、これまでの相部屋だった部屋も全て個室に切り替えました。最大18人まで滞在できるようにしていた時期もあったのですが、今は4〜6人で満室ですね」

 

 

しかし、そんな状況でも、原口さんの「おもてなし精神」は変わらない。「南大隅町はネット上の情報も少ないですし、来てくれた方には滞在を楽しめるようにしっかりサポートできればと考えています。お客様にも、行ってみてよかったお店や場所の話を伺っています。来てくださる方がいらっしゃるなら、全力でお迎えするだけですね」と笑顔で話す。

 

錦江湾サウスロードユースホステルは、どんな人でも気軽に滞在できる、実家のような場所だ。南大隅で泊まる場所に困ったら、ぜひ問い合わせをしてみてほしい。それぞれのやりたいことや目的に合わせた、のびのびとした時間が過ごせるはずだ。

錦江湾サウスロードユースホステル 原口雅子さん

鹿児島県肝属郡南大隅町根占川南718-2

https://www.e-yh.net/kinkowan/access.html

アクセス
・日南線志布志駅からバス鹿屋行1時間→終点鹿屋バスセンター下車乗り換え→バス根占・佐多行50分→ネッピー館前下車→徒歩2分
・鴨池~垂水フェリーの垂水港→路線バスで根占行60分→ネッピー館前下車→徒歩2分
時間
チェックイン:16:00以降
チェックアウト:10:00まで

・夕食:18:30
・入浴:21:30まで
・消灯:22:00
・朝食:7:30
料金
【宿泊料金】
・ユースホステル会員:3200円/日
・一般:3800円/日

【食事】
・夕食:1000円/回
・朝食:600円/回
駐車場
あり(ユースホステル横のスペース)
TEL
TEL:0994-24-5632
(FAX:0994-24-5632)

この記事を書いたライター

大杉祐輔

大杉祐輔

東京農大を卒業後、2018年から南大隅在住。フリーペーパー「かぜつち」編集長。趣味は猫と遊ぶことです!

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